特定技能 国別 人数データで見る主要国の今後の動向
特定技能制度で注目すべき国別人材分析
日本の労働市場は深刻な人材不足に直面していますが、中でも中小企業にとって労働力確保は大きな課題です。そこで注目されるのが特定技能制度です。
しかし、どの国からの人材を受け入れるべきかを決定する際には、国別の特徴やデータを理解することが重要です。ここでは、2024年6月末時点での特定技能外国人の国別実績を交えながら、各国の人材供給予測や特徴を解説します。貴社の事業に最適な持続的な人材戦略を考える上で、ぜひ参考にしてください。
2024年6月末時点での特定技能 国籍別の状況
2024年6月末時点でのデータによると、特定技能在留外国人の総数は251,747人に達し、前年より大幅に増加しました。具体的に国別の特徴を見てみましょう。
出典:出入国在留管理庁 https://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf
国別の在留者数と割合
上位国の実績:
国名 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
ベトナム | 126,832人 | 50.4% |
インドネシア | 44,305人 | 17.6% |
フィリピン | 25,311人 | 10.1% |
ミャンマー | 19,059人 | 7.6% |
中国 | 15,696人 | 6.2% |
カンボジア | 5,461人 | 2.2% |
ネパール | 5,386人 | 2.1% |
タイ | 5,178人 | 2.1% |
その他 | 4,519人 | 1.8% |
最近の傾向
- ベトナムの一強時代からの変化: インドネシアやミャンマーの台頭が顕著になってきています。
- インドネシア: 現地での試験も活発に行われており、新規入国者数が著しく増加しています。
- ミャンマー: 急増する傾向があり、将来的にベトナムを上回る可能性も指摘されています。
[1人当たりGDPを参考指標とした予測]
特定技能外国人の主な送出し国は年々増加していますが、他国も積極的に受け入れ態勢の整備を進めているため、将来的に十分な人数を集められるかは不透明です。自社に適した国を選ぶ際には、国民性や文化的配慮だけでなく、人材供給の将来予測も重要です。特に、競合国と比較して日本がどのように魅力的な選択肢を提供できるかが鍵となります。
一つの指標として「一人当たりGDP」を考慮すると、一人当たりGDPが低い国では、労働者がより積極的に海外就労を目指す傾向が見られます。
主要国の一人当たりGDPと供給予測
- ベトナム: 一人当たりGDPは約3,500ドル。日本への技能実習生や特定技能労働者の主要な送り出し国であり、今後も供給が見込まれます。
- フィリピン: 一人当たりGDPは約3,300ドル。介護や外食産業での需要が高く、英語力が強みです。
- インドネシア: 一人当たりGDPは約4,000ドル。農業や製造業で労働者供給源として注目されています。
- ミャンマー: 一人当たりGDPは約1,400ドル。近年、日本への労働者送出しが増加しており、製造業などでの需要が見込まれます。
- カンボジア: 一人当たりGDPは約1,600ドル。農業分野での労働者供給が期待されています。
- ネパール: 一人当たりGDPは約1,300ドル。日本への派遣が増加しており、外食産業や介護分野での需要が高まっています。
- バングラデシュ: 一人当たりGDPは約2,529ドル。特定技能に関する協力覚書に基づき、労働者供給が進んでいます。
- スリランカ: 一人当たりGDPは約3,846ドル。手続きが整備され、農業や外食業での派遣が進んでいます。
これらの国々は、日本の特定技能制度に基づく労働者の主要な供給源となっています。しかし、各国の経済成長や国内労働市場の変化、賃金水準などにより、日本への労働者供給に影響が出る可能性があります
特定技能外国人の受け入れ戦略を策定する際には、各国の経済状況や労働市場の動向を継続的にモニタリングし、柔軟な対応が求められます。
特定技能外国人の主要送出し国と特徴
1. ベトナム
- 主な特徴: 若く勤勉な労働力が多く、日本文化に対する理解が比較的高い。手先の器用さが求められる作業にも向いている。
- 主な就業分野: 製造業、建設業、外食業、農業、介護
- 人口分布: 人口約9,800万人。若年層が多く働き手が豊富。
- 主な送出し先の国: 日本、韓国、台湾
- 宗教と食事: 仏教徒が多いが、キリスト教徒も存在。宗教的な食事制限は少ない。
- 送出し機関: 利用が必須
2. フィリピン
- 主な特徴: 英語が公用語であり、コミュニケーション能力が高い。ホスピタリティ業界に強い。
- 主な就業分野: 介護、外食業、宿泊業、IT関連
- 人口分布: 約1億1,200万人、都市部に集中し、英語教育が普及している。
- 主な送出し先の国: 中東、日本、アメリカ
- 宗教と食事: カトリックが多数。特定の日に食事制限がある場合があるが、大きな制限はない。
- 送出し機関: 利用が必須
3. インドネシア
- 主な特徴: 世界最大のイスラム教徒人口を持ち、礼儀正しく真面目な労働者が多い。自然環境での労働に慣れているため、農業分野での適応力も高い。
- 主な就業分野: 農業、介護、製造業、建設業
- 人口分布: 人口約2億7,400万人。地域によって文化や生活習慣が異なる。
- 主な送出し先の国: マレーシア、サウジアラビア、日本
- 宗教と食事: イスラム教が主流。豚肉が禁忌であり、ハラール食品の配慮が必要。ラマダン期間中の配慮も必要。
-
- 送出し機関: 利用が必須
4. ミャンマー
- 主な特徴: 手先が器用で、集団作業に長けている。特に繊細な作業に向いていると言われており、製造業での活躍も期待される。
- 主な就業分野: 製造業、農業、建設業
- 人口分布: 人口約5,400万人。若年層が多く、多くの働き手の確保が可能。
- 主な送出し先の国: タイ、日本、韓国
- 宗教と食事: 仏教が主流であり、菜食を好む人もいるが、宗教的な食事制限は厳しくない。
- 送出し機関: 利用が必須
5. カンボジア
- 主な特徴: 手先の器用さが特徴で、製造業や建設業に向いている。国全体として経済発展が進む中、日本への労働者送出しも増加傾向にある。
- 主な就業分野: 製造業、農業、建設業
- 人口分布: 人口約1,600万人。若い世代が多く、労働市場に新規参入する人が多い。
- 主な送出し先の国: タイ、日本、韓国
- 宗教と食事: 仏教が主流。食事制限は少ない。
- 送出し機関: 利用が必須
6. ネパール
- 主な特徴: 人と人のつながりを重視。勤勉で真面目な国民性。文化的に親日的であることが多い。
- 主な就業分野: 外食業、農業、建設業、介護
- 人口分布: 人口約3,000万人。若年層が多く、就労希望者が多い。
- 主な送出し先の国: インド、日本、中東諸国
- 宗教と食事: ヒンドゥー教が主流。牛肉は禁忌であり、食事に配慮が必要。ベジタリアンも多い。
-
- 送出し機関: 推奨されるが必須ではない
7. バングラデシュ
- 主な特徴: 手先が器用で、特に製造業での適応力が高い。温厚で勤勉。コミュニケーションが得意で英語が話せる人も多い。
- 主な就業分野: 農業、製造業、建設業
- 人口分布: 約1億7,100万人。都市国家を除くと世界で最も人口密度が高い国の一つです
- 主な送出し先の国: サウジアラビア、マレーシア、日本
- 宗教と食事: イスラム教が主流。豚肉が禁忌で、ハラール食品に配慮が必要。ラマダン期間中の勤務配慮も必要。
- 送出し機関: 推奨されるが必須ではない
8. スリランカ
- 主な特徴: 優しく親しみやすくコミュニケーション能力が高い。英語教育が普及している。観光業や農業に強みがある。
- 主な就業分野: 農業、外食業、製造業
- 人口分布: 約2,100万人、都市部に集中しているが、地方部にも労働力がある。
- 主な送出し先の国: 中東、日本、韓国
- 宗教と食事: 仏教、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教が混在し、ベジタリアンが多い。食事に配慮が必要な場合がある。
- 送出し機関: 推奨されるが必須ではない
送出し機関の利用が必須の国
特定技能人材を現地国から受け入れる場合、送出し機関の利用が必須の国とそうではない国があります。
特定技能人材を受け入れる際に、現地国の送出し機関の利用が必須となる国は以下の通りです。
- ベトナム
- フィリピン
- インドネシア
- ミャンマー
- カンボジア
これらの国では、日本と各国政府の間で協力覚書(MOC: Memorandum of Cooperation)が締結されており、特定技能人材を日本に送出する際には、認定された送出し機関を通じて行うことが義務付けられています。
送出し機関の利用が必須ではない国
一方、送出し機関の利用が必須とされていない国は以下の通りです。
- ネパール
- バングラデシュ
- スリランカ
これらの国では、現時点で協力覚書により送出し機関の利用が義務付けられていませんが、信頼できる送出し機関を利用することが推奨される場合があります。これは、スムーズな手続きやトラブル回避のための対策として役立つことがあります
まとめと今後の戦略
特定技能外国人を受け入れる際は、各国の「特定技能 国別」や「特定技能 国 ランキング」に関する情報を基に、貴社のニーズに合った柔軟な受け入れ戦略を立てることが重要です。
例えば、労働市場の変化に対応し、複数の送り出し国からの人材確保を検討することも一つの方法です。長期的な視野で経済状況や労働市場の動向を継続的にモニタリングし、自社に最適な人材を選定することで、持続可能な成長に寄与できると考えられます。
貴社の特定技能外国人の受け入れに関するご相談をご希望の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。